2007年、中東の空は戦争の暗雲に包まれたまま、新年を迎えた。公表されている数だけでも米軍の死者は3000人を超えた。アメリカ国内にはその10倍、3万人をはるかに超える負傷者がいる。手足を失った者、視力を失った者、劣化ウランで無気力になった者などが、働く場もないまま放置されている。
バグダッドの死体置き場に持ち込まれるイラク人の死体は毎日何十体、何百体と増えるばかり、民間人の死者はすでに十万人を超えていると報道されている。
アメリカの中では、戦争反対の声が野に満ち、昨年11月の中間選挙でブッシュ・共和党は大敗北した。
イスラエルに根を持つ先制攻撃を命とするネオ・コン(新保守主義)は今追い詰められている。イラク戦争を主導したチェイニー副大統領、ラムズフェルド国防総省長官、ウォルフォビッツ同副長官(現在は世界銀行総裁に転進)、ボルトン国連大使はたった今まで権力を振り回す「時の人」だったが、ラムズフェルドとボルトンはクビになった。
ブッシュ大統領は米軍21500人を増派し、バグダッドの治安を確立し勝利すると声明した。しかし現地司令官も統合参謀本部も反対し、議会でも共和党が少数派となった現在、その貫徹は難しくなっている。イラク政府軍と共に配置し、情勢が沈静化したら、11月には引き揚げるという計画だが、軍部はそんなことを誰も信じていない。イラク政府軍の数だけそろえても武器を渡したらすぐ消えてしまう、筒先がどっちを向くかわからない情勢がより悪くなっているのが現状である。
2003年6月には、「これでベトナム戦争の疵が癒えた」と米軍が胸を張ったのもつかの間、戦争の泥沼は深刻化していった。2006年4次にわたる中東戦争をすべて勝ち抜いてきたイスラエル軍がレバノンでヒズボラ民兵に敗北した。アメリカの敗勢は全世界の知るところとなってきた。
これを巻き返すために、アメリカは戦争を拡大しようとしている。
私達はこうした情勢のもとで、あらゆる矛盾点の中、生き抜いているイラクの民衆の視点から、自分たち自身のあり方をみつめなおしていきたいと思う。